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 2012年2月1日 163号
 
 「民泊」の課題

 
 2012年も早くも1ヶ月が終わろうとしています。

 旅行業界では2013年度の秋の公立の高等学校の修学旅行の目的地選びが本
 格的にスタートします。

  その修学旅行先とともに目的として、この数年で一気に人気が高まっている、受入
 先として全国的に名乗りをあげる地区が年々増えている「民泊」の課題を取り上げ
 ます。

 
 1.学校が修学旅行の目的地選考の基準・指針は
    
   (1)安心・安全である
    (2)教育委員会が定めている方針にそった目的地である
     (3) 生徒の希望が多い地区・内容である
    (4)費用があまり父兄の負担にならない 

     ◇ 文部科学省が掲げている指針は下記です。
        ○小学校、中学校、高等学校等の遠足・修学旅行について
  http://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/nc/t19681002001/t19681002001.html

   2.修学旅行の傾向

    同行する宿泊日数、旅行費用、同行する先生の人数、生徒の参加率、等々
    限られた様々な基準・指針に基づき、「良き思い出作り」と実施されている修
    学旅行。

   (1)名所・旧跡探訪から体験・ふれあい重視
       埼玉県の修学旅行の指針では「埼玉の子ども70万人体験活動」を掲げ
     ており、全国的に名所・旧跡・歴史探訪から、体験・ふれあい体験を求める
     傾向が主流となりつつあります。

   (2)限られた旅行費用
      都道府県や市によっては修学旅行にかかる費用で、父兄の多大な負担
     にならないように考慮して、上限額を決めているところ多い。


   ◇ 参考:全国公立高校の旅費限度額例 
      ※ 修学旅行情報センター2011年資料より抜粋
      http://shugakuryoko.com/chosa/kijun/2011-01-seirei.pd
都道府県 旅行費用額 都道府県 旅行費用額
岩手県   85,000円 以内 宮城県       85,000円
長野県 110,000円 上限 埼玉県 81,000円 以内
東京都 79,800円 税込 千葉県 本州  85,000円以内
以外  100,000円以内
静岡県 75,000円 程度 愛知県 75,000円 以内
三重県 66.000円 程度 兵庫県 80,000円 程度
奈良県 80,000円 以内 和歌山県  74,000円 限度
福岡県 77,000円 以内 長崎県 104,620円 以内
熊本県 79,000円 程度 鹿児島県  80,000円 以内
仙台市   85,000円 川崎市      109,200円
名古屋市   75,000円 大阪市 72,000円 程度
京都市   85,000円 神戸市 73,000円 以内
福岡市 79,000円 以内

    ※ 注意
    ◇上記表記外に、本州とそれ以外、国内と海外との額を別々に設定している
      県があります。
    ◇上記表記外の県は、父兄の負担がかからない程度などの表現となっており、
      特に制限の表記はしていません。


   (3) 旅館・ホテル泊から民泊へ
      人気が高まってきているのが民泊です。

      現在、修学旅行(課外学習)として民泊の受入協議会 ないし、受入組織
     を作り、受入をしている地区(しよう としている地区 も含む)は全国で56
     地区+沖縄県8地区(弊社調べ:民宿営業で民泊と表記している地区は除
     いています)で、年々その受入地区は拡大の一途をたどっています。

     56地区の中には、まだまだ体制が不十分な地区から、県・市・民間NPO
     が共同で、がっちりと受入をしている地区と様々です。

  3.民泊の魅力は

     (1) 未知の地を訪れ、未知の田舎体験ができる
        1) ありのままの自然
        2) 農林漁業体験
        3) 地元の食を味わい、様々な文化にふれる
        4) 地元の伝統産業、行事、風物の見聞

    (2) 受入先の家族との交流・ふれあいができる
    
    (3) 一般の旅行の宿泊先として宿泊したくても旅行会社の旅行プランには
       ありません。む

       まさに学生時代ならではの体験です。

 4.民泊受入の位置付け

    現在、取扱指針、実施方針、実施方法、取扱要綱、ガイドラインなどを定め
    ている県は

    ◇ 民泊範囲の明確化をしている
      岩手県・山梨県・鳥取県・島根県・高知県の5県

    ◇ 教育旅行限定
      宮城県・秋田県・山形県・新潟県・徳島県・山口県・鹿児島県の7県

    【共通事項】
    ・受入窓口が市町村等の行政が含まれた組織に登録し、認可された受入先
     であることが前提で、一般組織・農林漁家単独では認められない。
    ・年間の実績などの報告を義務づけている
    ・衛生管理や安全対策に関する研修等が必要。

    ▼ 沖縄県のように年間推定で7万人もの民泊の受入をしていながら、県独
       自の受入指針を出していない県もあります。

 5.民泊受入の課題
   (1)コンプライアンス
      
     安心安全に関して、年々、父兄・学校の目が厳しさを増し、コンプライアン
     スが叫ばれている中、受入地区での早急のガイドラインの条文化は不可
     欠です。

   (2)受入体制
受入地区 年間受入人数 受入家庭数 1軒当たり
年間受入人数
(1)  沖縄県・伊江村 20,000人 120軒 166.6人

 伊江村は人口4,826人の農業を中心に、漁業・畜産を産業としている、
 本島からフェリーで30分の立地で、帰りの桟橋から船を見送る別れが
 郷愁を誘うこともあり、修学旅行では 非常に人気が高い離島の村。

  120軒(2010年資料)で民泊の受入をしている。
    
 1軒当たり年間平均166人だ。修学旅行のシーズンは5月上旬から6月
 下旬と10月から12月上旬と120日間くらいに限定されているので、その
 間毎日くらい生徒を受け入れている 計算となる。

    もう、飽和状態といえるだろう。

 体験はまとめて集団できるだろうが、民泊で学校が一番求めている、地元
 の人たちとのふれあい、交流から、どれくらい温もりは伝えられるかと、
 ふと想いを巡らせてしまう。

(2) 長崎県松浦市・佐世保市・平戸市等13地区 30,000人 500軒 60人

  一般社団法人まつうら党交流公社は2012年度に3万人 の予約が
  予定されている。

  松浦市・佐世保市・平戸市を含めて13地区で規制緩和の条件での
  民宿営業の許可を取得した登録家庭ばかりが約500軒、体験プログ
  ラム90種類と万全の構えだ。

   ただ、この公社のオペレーションで若干残念なのは体験インストラク
  ターと宿泊先のオーナーたちが違う点だ。

   これが、宿泊先の農林漁家の家業の作業体験ができればふれあい
  度も増して生徒の皆さんも、その喜びを享受する受入側もベストだ。

(3)
鹿児島県南さつま市・鹿児島市・枕崎市・日置市など
11市1町26地区
10,000人 520軒 19.2人

  「薩摩半島自然学校」は2011年に1万人の受入を達成できました。

  南さつま市、南九州市、枕崎市、日置市、薩摩川内市、いちき
  串木野市、伊佐市、さつま町の薩摩半島と、垂水市、鹿屋市の
  11市1町26地区で、登録家庭は500軒を超えています。

   ここの地区では、1軒当たり受入人数を原則3人とし、農林
  漁家の宿泊先の家業を家族の方々と作業体験するという、ふれ
  あい度、コミュニケーション度、温もり度が深い、理想的な受
  入体制です。
(4) 沖縄県・宮古島
さるかの会
10.742人 85軒 123.2人

 さるかの会は、2011年1万人を超え、2012年度は1万5千人を予定
 している。宮古島は航空運賃も割高なのに関わらず、関西方面からの
 人気が高い。
 
   但し、受入家庭軒数が限られ、いるため無理せず受入をしていると
 のことだが、伊江村ほどではないが、受入のキャパはもう飽和状態の
 ようだ。


  6.Warning
    
        受入家庭の99%は、わざわざ修学旅行で来てくれたのだから「絶対、喜んで
    帰ってもらうのだ」と生徒の皆さんをお迎えする気持は熱い。

     受入の条項に「お客様扱いはしません、家族の一員としてお迎えします」と記
    載しているところが多い。
    従って、食事も「ご馳走ではなく、普段、家族の食べている内容のものを出しま
    す」としている。

     しかし、ごくごく一部ながら、
    「収入のたしになるからとアルバイト感覚」、
    「どうせ学生なんだから分かりやしない」、
    「家業が忙しいから仕方がない」等々と、

    「そんな気持なら、最初から引き受けるなよ−」と怒りの声をあげたくなる受入
    家庭が存在する。

    そんな家庭の登録は受けつけなければよいのにとお叱りの声が出るでしょう
    が、受入家庭が100軒を超える地区では、受入家庭を常時募集しなければな
    らない状況もあり、充分確認しないで、書類だけで判断せざるを得ない場合が
    出てしまう。

   ▼ クレイム例

   下記の事例はほんの一部ですが、大げさにホスピタリティなんていうのではな
   く、自分が生徒の立場に立った時に、嫌な思いをしないためにはどうするか、
   ほんのちょっと考えれば解消できるものばかりです。

   (1) 一軒家をイメージしていたが、団地の一室だった

   (2) 子供用室内の滑り台や遊び道具が置いてある部屋で、狭くて寝られな
      かった。

   (3) 物置みたいな場所に寝かされた

   (4) 事前に知らされていた野菜栽培、地元料理作り体験などができない一
     般家庭だった

   (5) 2泊4回の食事に、毎回ポテトサラダが出た。

   (6) 朝トースト1枚しか食べられなかった。

   (7) 家の夫婦が外出してしまい、留守番のおじいさんとの会 話もなく、1日過
      ごすことになった。

   (8) 1軒ごとに体験するはずが、他のクラスの知らない生徒達と一緒に体験
      となってしまった。

   (9) 宿泊家庭には車が1台しかなく、体験場所まで2km近く 往復歩かされた。

     (10) 夜9時過ぎまで体験をさせられた。

     (11) 家業で喫茶店兼スナックの営業をしており、酒を運ぶのを手伝わされた。

     (12) 近所の人たちと酒飲み会の場所で夕食をさせられた。

  7.民泊の流れは止められない

      受入側も安心安全に配慮しながら、平常の家業を全うし、息切れがしないよ
    うに、常に「温かくお迎えする」のだという、受入魂を常に意識しておく必要
    がある。

      しかしながら、シーズン中、毎日、毎日生徒の皆さんを迎える状態が続けば、
   ダメと思いつつ、ホスピタリティ精神も薄れてしまいがちとなるはずだ。

     ほんの一人、1軒でも不愉快な、期待はずれな受入の対応が発生すれば、学
  校側は「もうこんな地域は使えない」という判断となり、永久に候補地から追放
  されてしまうのは、間違いありません。

   99%の人たちの努力、気配りが一晩で無駄になってしまいます。

     地元に産業が乏しい地区は当然のことながら、町村の活性化と ともに経済効
  果が期待できる「民泊」です。

    しかしながら、受入の皆様がゆめゆめ忘れてはいけないことは 微笑えましい、
  忘れ難い「学生生活のすばらしい思い出の1ペ ージを作る担い手」だと自覚す
  ることだ。


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   有限会社LSプランニング 代表 長坂克巳

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